農作物栽培の安全性と品質を追求するために、当社では岐阜大学と共同研究を行い、Symbolブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムの試験導入を、岐阜県恵那市にある自然薯農家にて実施しました。意外と知られていない!?金融資産だけじゃないブロックチェーンの技術とは?ここ最近、ビットコインが史上最高値を記録したため、業界をまた賑わせ始めました。このビットコインこそブロックチェーン技術の始まりです。ブロックチェーンとは分散型デジタル台帳技術の一種で、データのブロックを時系列順にチェーンのように連結して管理するシステムです。この技術は、データの改ざんが困難で、透明性が高く、セキュリティが強固であることが特徴です。ブロックチェーンは、暗号資産(仮想通貨)の取引記録の保管に最初に使用されましたが、その応用範囲は金融業界にとどまらず、サプライチェーン管理、電子投票、不動産登記、デジタルアイデンティティの認証など、多岐にわたります。分散化ブロックチェーンは中央の管理者が存在せず、ネットワーク参加者全員がデータのコピーを保持することで、データの信頼性と透明性を確保します。改ざん耐 一度ブロックチェーンに記録されたデータは、後から改ざんすることが非常に困難です。これは、各ブロックが前のブロックに対する暗号学的なハッシュ値を含むことで、データの連鎖が保護されるためです。透明性ブロックチェーン上のデータは、参加者によって検証できます。不特定多数の人がアクセス可能であることで、高い透明性を実現します。自動化契約(スマートコントラクト) 条件が満たされた時に自動的に実行されるプログラムをブロックチェーンに組み込むことができます。こうすることで、中間者を介さずに取引や契約が自動的に実行されるようになります。岐阜大学との共同研究によるトレーサビリティシステムの試験導入当社で取り組んでいるブロックチェーン技術は、商品の生産から配送、そして消費者が商品を手に取るまでの過程を透明に追跡し、偽造や紛失のリスクを軽減するサプライチェーン分野に特化したブロックチェーントレーサビリティです。まずは、農作物のトレーサビリティ分野から開始します。農作物の栽培において、安全性と品質の確保は非常に重要です。しかし、従来の栽培管理では透明性が不足していること、また昨今の産地偽装が国内外で当たり前に起きている状況になってしまったことから、これまで生産者への無条件の信頼で成り立っていたことが少しずつ崩れてきました。消費者はよりオーガニックの野菜を求める中、農薬を使用しないと成り立たない日本の農業とでは隔たりがあります。そこでまずは、生産者と消費者との信頼関係の構築を築く一歩となるため、当社は岐阜大学と共同で研究を行い、Symbolブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステム「Canna-Pi」の共同開発を行いました。Canna-Piは、分散型台帳技術を基にしたデジタルトレーサビリティプラットフォームであり、情報の改ざんや不正な操作を防ぐことができます。またこのシステムにより、農作物の栽培に関する重要な情報(栽培地、栽培方法、施肥、農薬の使用状況など)をブロックチェーン上に記録し、生産者から消費者までの情報の透明性を確保することができます。また、システム上で取得したデータを分析することで、栽培管理の改善や品質向上にも繋げることができます。トレーサビリティによる自然薯栽培の安全性と品質向上の期待自然薯は、その独特な風味と栄養価の高さから注目を集めています。しかし、栽培においては天候や害虫などの要素が品質に影響を与えるため、安定した品質の確保は容易ではありません。Canna-Piを活用したトレーサビリティシステムの導入により、生産者が正確な情報を記録し、消費者がその情報を簡単に確認することで、農作物の品質や安全性に対する信頼感が向上することが期待できます。さらに、システム上で蓄積されたデータを分析することにより、栽培管理の改善点や生育状況の把握が可能となります。これにより、生産者は効果的な栽培方法を見つけ出し、より安定した品質の農作物を生産することが期待できます。農作物の安全性と品質に対する期待が高まる中、今後も当社では研究を進め、栽培管理のスタンダード化を目指していきます。トレーサビリティの応用、バイオマス燃料に向けた将来の展望ブロックチェーンの特性である透明性、改ざん耐性、分散化により、生産から消費者までの各ステップを確実に記録し、情報の信頼性を高めることが可能であることで、バイオマス燃料のトレーサビリティにも応用ができます。過去何十年と世界中で違法伐採が行われてたくさんの森林が失われてきました。今でもタイや東南アジア諸国では違法伐採された木々がバイオマス燃料として使われています。当社では、タイ現地の関連企業を通じてパームプランテーションからチョンブリ県のペレット工場までの輸送、ペレット化、輸出までの工程を農作物トレーサビリティ技術を応用し、バイオマストレーサビリティとして段階的に導入テストをしていきます。違法伐採業者からのバイオマス燃料と、正式な間伐材、剪定材、エネルギー作物などから作られたバイオマス燃料との差別化を図ることで、環境破壊阻止に貢献できるだけでなく、カーボンクレジットの偽装(ジャンクカーボン)を減少させることもねらいです。