近年、どこもかしこもサステナブル、サステナビリティなどの言葉が多方面のビジネスシーンで会話がされてきました。このサステナブルやサステナビリティがここまで流行るようになったのは、国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)に起因します。SDGsとはSustainable Development Goals の略称で、これらは、2030年までに達成を目指す17の目標と169のターゲットから構成されております。もともとSDGsは、2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)を踏襲しています。MDGsは極度の貧困と飢餓の撲滅など、開発途上国の課題に焦点を当てた8つの目標を設定したものです。このMDGsの取り組みを受け継ぎ、より包括的な持続可能な開発を目指してSDGsが策定されたのです。主にSDGsは、貧困の撲滅、飢餓の撲滅、健康と福祉の向上、質の高い教育の提供、ジェンダー平等の実現、清潔な水と衛生の確保、安価でクリーンなエネルギーへのアクセス、働きがいのある経済成長、産業と技術革新の基盤の強化、不平等の削減、持続可能な都市とコミュニティの構築、持続可能な消費と生産のパターン、気候変動への対策、海の豊かさの保全、陸の豊かさの保全、平和と公正をすべての人に、そしてパートナーシップによる目標達成などがあり、社会的、経済的、環境的な持続可能性に関わる幅広い分野をカバーしています。SDGsは、国、地域、産業、市民社会が協力して取り組むべき普遍的な課題を示しており、全ての国が北南問わず、富裕国も途上国も共に努力することを目指しています。これらの目標は、地球上のすべての人々の生活を改善し、未来の世代が持続可能な環境で生活できるようにするための国際社会の共通の取り組みと見なされています。出典:日本ユニセフ協会SDGsは突然できたわけではないSDGsに至る背景には、産業革命以降の社会経済的な変化、人権と自由の追求、環境問題への対応、そして持続可能な開発への国際的な合意があります。これらの歴史的な流れは、SDGsの形成に深く影響を与え、現代社会が直面する課題への解決策を提供しています。SDGsの実現に向けた取り組みは、これまでの歴史的な経験を踏まえつつ、全ての人々がより良い未来を共有できるよう努めることが求められています。SDGsが採択されるまで、遡ること1760年代。この時代に始まった産業革命は、機械化による生産性の飛躍的な向上をもたらし、世界の経済や社会構造に大きな変化を引き起こしました。しかし工業化の進展は、大気汚染や労働条件の悪化など多くの環境問題や社会問題をも引き起こします。後の1860年代、ロンドンやヨーロッパの都市部での大気汚染が深刻化し、これが初期の環境問題の一つとして認識されました。1789年のフランス革命は、自由、平等、博愛の理念を打ち出し、人権の普遍性という概念を世界に広めました。1863年のリンカーンによる奴隷解放宣言や1948年に採択された世界人権宣言は、このフランス革命由来による人権に関する国際的な合意形成に重要な役割を果たしました。これらの動きは、後のSDGsのすべての人に平和と繁栄を実現しようという根底に流れる人権尊重の理念に直結します。20世紀に入ると、工業化による環境破壊が顕著になり、これに対する国際的な取り組みが求められるようになりました。1972年の国連人間環境会議や1992年の地球サミットなど環境保護を目的とした国際会議が開催され、環境問題への国際的な認識が高まります。これらの会議は、SDGsにおける持続可能な都市とコミュニティの実現や気候変動に対する具体的な対策など、環境に関する目標の基盤を築きました。まずは知っておくべき日本のSDGs推進体制日本政府はSDGs達成のための推進体制として、首相を本部長とする「SDGs推進本部」を設置しました。この本部は、関係省庁が連携してSDGsに関連する施策を総合的に推進する役割を担っています。また、民間セクター、学術界、市民社会との連携も強化し、多様なステークホルダーの参画を促進しています。まず第一に経済成長と働き方の改革です。日本政府は、経済成長と社会的包摂を同時に実現するため、「働き方改革」を推進しています。これにより、労働時間の短縮やテレワークの普及など、持続可能な労働環境の整備を目指しています。また、女性や若者、高齢者の社会参加を促進し、ジェンダー平等の実現にも取り組んでいます。次に環境保護と気候変動対策です。気候変動への対応として、日本は「温室効果ガス削減目標」を設定し、再生可能エネルギーの導入拡大や省エネルギー技術の開発に力を入れています。また、持続可能な都市開発や生物多様性の保全にも注力し、環境に配慮した社会の実現を目指しています。最後に教育と人材育成です。教育の機会拡大と質の向上を図るため、幼児教育の無償化や高等教育への支援拡充を進めています。また、グローバルな視点やSDGsに関する理解を深める教育プログラムの充実を図り、次世代のリーダー育成に努めています。それでも2023年の日本のSDGs達成率は過去最低だったSDGsを普及させる為に官民一体となって取り組んでいても、2023年のSGDs達成率は過去最低ランクを更新して23位でした。SDGs達成率は17の目標に対して、「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」という4つのレベルで評価を行っています。持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)は、ジェフリー・サックス教授(米国コロンビア大学の経済学者)がリーダーを務める持続可能な開発解決策ネットワーク(SDSN)によって2016年から毎年発表されています。この報告書では、国連や各種研究機関が提供する統計データを基に、世界各国のSDGs達成に向けた取り組みを100点満点で評価し、SDGs達成度指数(SDG Index)として公開し、それに基づいた国別ランキングを作成しています。2023年の日本の達成率が23位だった理由は「深刻な課題がある」と評価された目標の中で、特に目標5「ジェンダー平等を実現しよう」です。これは国会(衆議院)の女性議員の割合の低さと、男女間での給与の不平等が顕著な問題点として挙げられます。また目標13「気候変動に具体的な対策を」に関しては、化石燃料の使用やセメント生産による二酸化炭素の排出が多いことが低い評価の要因となりました。続いて、目標14の「海の豊かさを守ろう」及び目標15の「陸の豊かさも守ろう」についても課題が指摘されています。また前年に引き続いて「深刻な課題がある」と評価された目標12「つくる責任つかう責任」も、電子機器の廃棄やプラスチックゴミの海外への輸出が依然として問題とされています。出典:朝日新聞 https://x.gd/cQ0WW再生可能エネSDGsの期待が裏目に出ることにも留意一方でSDGsは、広範な支持を受けているものの、実施に際していくつかの課題やデメリットが指摘されています。SDGsは17の目標と169のターゲットから構成されており、これらの間で相互に競合する場合があります。例えば、産業化や経済成長(目標8)を推進することが、環境保護(目標13、14、15)に悪影響を及ぼす可能性があるなど、バランスを取ることが難しい状況が生じることがあります。SDGsの達成には膨大な資金が必要であり、特に開発途上国では資金不足が深刻な問題となっています。国際社会からの支援や公的・私的セクターからの投資が不可欠ですが、十分な資源が確保されているとは限りません。SDGsは非常に包括的で野心的な目標を掲げているため、各国がこれらを実施し、進捗を監視することは複雑かつ困難です。特に、データ収集や進捗評価の体系が未整備な国では、目標達成に向けた正確な評価が難しい場合があります。SDGsの成功は、国際的な協力に大きく依存します。政治的な意志の不一致や国益の対立などにより、効果的な協力が実現しない場合があります。また多国間での合意形成が難しい場合もあり、グローバルな課題に対する統一された対応が取れないこともしばしば見られます。SDGsに対する期待が過大になることで現実的ではない目標設定や短期間での成果を求める圧力が高まることがあり、持続可能な取り組みよりも短期的な成果が優先される傾向も最近は顕著になってきました。企業だけではない!今日から個人でできるSDGsとは?SDGsは、国や地域、企業だけでなく、個人レベルでも取り組むことが可能です。日常生活の中で意識的な選択をすることにより、誰もが持続可能な世界の実現に貢献できます。以下に、今日から個人でできるSDGsへの貢献方法をいくつか紹介します。エコフレンドリーな生活を心がける節水・節電: 水道水や電気の無駄遣いを避け、資源を節約する。リサイクル: 可能な限りリサイクルを行い、不要な物品は適切に処分する。再生可能エネルギーの利用: エコなエネルギー源を選択する。持続可能な消費を実践する地産地消: 地元で生産された食品を購入し、食料品の輸送によるCo2排出を減らす。フェアトレード製品の購入: 生産者に公正な報酬が支払われる製品を選び、社会的な公正を支援する。過剰包装を避ける: 無駄な包装が少ない製品を選び、プラスチック使用量の削減に努める。 エコフレンドリーな移動手段を選ぶ公共交通機関の利用: 自動車の使用を控え、公共交通機関を利用する。自転車や徒歩: 短距離は自転車や徒歩で移動し、健康と環境の両方に良い選択をする。教育と学習に投資するSDGsに関する知識の習得: SDGsについて学び、理解を深め、人に伝える。次世代への教育: 子どもたちに環境問題について教え、意識を高める。地域社会への貢献地域活動への参加: 地域の美化や清掃活動に参加し、環境保護に貢献する。ボランティア活動: 社会的な課題解決に向けて、地域やNGOの活動にボランティアとして参加する。環境に配慮する企業を見つける企業の応援: 環境問題に取り組む企業を見つけて、持続可能な経済の成長に貢献しているか見定め、応援する。これらの行動は、個人が持続可能な開発目標に貢献するための一例です。日常生活の中で意識的な選択を行うことにより、地球環境の保全や社会的な公正の実現に向けた大きな一歩となります。SDGsは私たち一人ひとりの行動によって実現されるものであり、日々の生活の中で持続可能な選択を心がけることが2030年の目標達成に繋がるのです。